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T・OキーマスターT・Oキーマスター
質問
熱殺菌工学講座①︓⼊門編 殺菌値の計算
スライドp30で、達温までにかかる時間が直接加熱のほうが短いですが、どのような間接加熱UHTでも必ずこのようになるのでしょうか。回答
グラフを見るとわかりますが加熱機では通常余熱⇒本加熱というステップを踏みます 。
間接加熱であっても余熱での達成温度を高めにセットし、かつ本加熱に使用する間接加熱の熱伝達効率を高く保てば(スケールがついていない使用し始めて間もない状態がまさにそれに当てはまります)理論上は本加熱で達成すべき温度差が小さくなりかつ本加熱用のプレートのわずかな面積で温度を上げることが可能ですので①ほとんど瞬時に目的の温度に到達することができます。
①は直接加熱で起きる本加熱が開始されて短い時間ながらも➁蒸気が溶け込むのに必要な時間よりも短いことがありえますがあくまで理論上の言葉のお遊びでしかないでしょう。通常の加熱機ではいつもといっていいほど直接加熱の方が間接加熱よりも短時間で昇温を成し遂げます。T・Oキーマスター質問
長く製造をしていると、ラインに高熱耐性のある菌が残っていくということであるが洗浄方法の改善・工夫によりこれらは無くせないものなのか?回答
汚れが落ちやすい箇所をおっしゃっているのであれば洗浄(あるいは使用前殺菌・滅菌)で充分対応可能です。
しかし多くの問題は洗浄が行き届いていない(あるいはそれに気づいていない)箇所を起因にして生じます。1.平滑面と思っていたが傷がついていたクラックがあったという事実の発見はよくあることです。
2.平滑面とおもっていたがガスケット(パッキン)でつながれている箇所があり、ガスケットには製品がしみこみやすくそこで菌の巣が作られる。こういったガスケットの中には洗浄も前滅菌も届きにくく菌は生き延びます。それが製品を流す折に(通常製品は低い温度で流されるので)ステンレスパイプが低温で収縮し、ガスケットとパイプの間の隙間に製品が入り込みやすくなるため入り込んだ製品が菌を引っ張り出すという症状を起こします。
3.通常我々の関心は製品に直接触れていると感じている箇所に集中しがちなのですが実は缶詰であれば巻締機、パウチであればシール機にも耐熱性菌が繁殖しがちでそのことはあまり知られておりません。巻締機の中には蒸気が吹き込まれかなりの高温で維持されています。蓋を載せたのち缶は回転され遠心力で内容物が染み出てきます。空気由来の耐熱性菌にとっては水分・栄養・温度が整った環境が整えられているわけで急激に数をましていきます。また巻締機の内部には小さな隙間がたくさんありグリスの多用もあってそこに脂混じりの汚れが食い込んでいきます。こういった油汚れは簡単には落ちません。そして油汚れの中にはすでに何代にもわたって鍛えられてきた耐熱性菌が取り込まれているのです。汚れは油汚れはミストに取り込まれて巻締機の中を飛んでいるので蓋をする前の製品中にはどんどん入り込みます。
4.ほかにも充填ノズルなどは昔から汚れを落としにくいものとして知られています。パウチなどを真空脱気する引き抜きラインにも芽胞菌は増殖していてこれが逆流することもあります。
- この返信は2年、 7ヶ月前にT・Oが編集しました。
T・Oキーマスター質問
酸味料の影響について
食品衛生法上殺菌は同条件でよいと判断されるかと思いますが、飲料を設計した際に同じpHでも酸味料の量が異なる場合に影響はあるでしょうか?単純にpHだけが微生物の発育に影響するのか、配合量も関係するのでしょうか?
例)酸味料の配合量が少量でpH3.8に調整する場合と酸味料の配合量が多くpH3.8に調整したもの回答
通常はpHそのものとお考え下さい
pH調整剤には緩衝能を持たせるための塩類、酸味を和らげるためのマスキング剤様々なものが配合されますが最終的なアウトカムであるpHによって必要な殺菌水準が規定されます。ただしpH調整剤に含まれる副剤が多少静菌作用を持つこともありますのでおもてむきの殺菌必要量に差異が出ることもまれにはあります。T・Oキーマスター質問
PET飲料における一般的な加速試験・光虐待試験の条件
風香味の劣化を加速で見たい場合、どの様な設定条件にするのがよいのか。回答
➁いわゆる熱による化学変化についてはアレニウス式に従うものとして 10℃で約二倍の加速になります。しかし缶であればともかくもPETの場合光も透過し、酸素も透過しますので加速試験を実施するのであれば
➁ー1 恒温機ではありながらもその中に蛍光灯(スーパーなどの店頭をシミュレーション)または機器を別にして太陽光灯(または蛍光灯の照射試験が終わってから太陽灯に切り替え)を照射しつつどの程度の官能評価の結果が出ていくか見ていくことになります。
➁ー1 についてはやっておくことが望ましいのですがそこまでの設備を持っている事業者もすくなく簡便的には恒温機の中で温度だけ上げて変化を見る。その結果に通常より大きな安全係数をかけることで処理していることが多いのではないでしょうか。
光に弱い例えばレモン果汁中のピール成分でもない限り温度だけの加速で行けますがもしお問い合わせの件が果汁であった場合香りは果汁そのものあるいは天然香料であった場合などには光照射しての評価をやっておくことが望ましいものです。
もし光の影響が甚大であると判定された場合にはシュリンクラベルでおおわれる面積を大きくする。シュリンクラベルに紫外線阻止能力のあるコーティングをするボトルそのものも表面加工し紫外線透過率を下げるなどで逃れることになります。T・Oキーマスター①F値の中でも【Z=10℃、Tb=121.1℃】での殺菌効果に換算する際用いるのが【F₀値】、
【Z=8℃、Tb=85℃】もしくは【Z=5℃、Tb=65℃】での殺菌効果に換算する際用いるのが【Fp値】という認識で合ってますでしょうか。②F₀値、Fp値の使用例として下記の内容は合ってますでしょうか。
・pH4.0未満、中心温度65℃、10分間と同等の殺菌条件を求める時⇒Fp(F65/5)値
・pH4.0~4.6、中心温度85℃、30分間と同等の殺菌条件を求める時⇒Fp(F85/8)値
・その他の条件で同等の殺菌条件を求める時⇒F₀値③耐熱性データとして「温度」と「D値」の記載がありますが、基準温度はどのようにして決めているのでしょうか。基準温度は耐熱性データが得られやすい温度という認識で合ってますでしょうか。
⇒①、②ともにその解釈で結構です
③ちょうどアンカーにしやすい温度を狙って基準温度としています。ホットパック程度でしたら85℃~100℃、レトルトでしたら121.1℃
UTSTなど130℃を超える温度では試験室レベルでの達成が難しいことから121.1℃の援用で済ませることが多いです- この返信は1年、 8ヶ月前にT・Oが編集しました。
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