このサイトではJavaScriptを使用しています。ブラウザの設定でJavaScriptを有効にしてからお使いください。 レトルト食品開発の留意点 [講習会詳細] | テックデザイン
※お申込前に「注意事項」をご確認ください

あまりにレトルト食品の安全度が高まったため、スイッチポンでなんでもうまくいくものという根拠のない自信が生まれてしまった昨今ですが、それは皆失敗から学び続けた先人たちの苦労のたまものであることを忘れてはなりません。先人たちの苦労を理解することなく、浅薄な知識の赴くままにレトルト食品を設計・製造・販売していくというのはあまりにも危険に満ちた作業です。アメリカでHACCPがあれほどに発展したというのはレトルトで失敗し開拓時代にはボツリヌス症死亡者数が年間百数十人を記録したという背景があり二度とそのような惨事は繰り返さないぞという固い決心のもとで悪戦苦闘の繰り返してきた歴史の反映なのです。

 

レトルト食品開発の留意点

 

コード tds20251111t1
ジャンル 食品
形式 対面セミナー
日程/時間 2025年 11月 11日(火) 12:30~17:00
会場

関西大学 東京センター(東京 東京駅 大手町駅)

受講料
(申込プラン)

会場受講: 39,600円 (消費税込)

 

●講師

一般社団法人 食品品質プロフェッショナルズ 代表理事 テックデザインパートナー講師 広田 鉄磨

ネスレのグローバル組織で海外勤務を 13 年経験、地方や国によって大きく食品安全の概念や座標が異なることを体感。帰国後は その経験をもとに 厚労省の HACCP 教育ツール開発グループメンバー、農⽔省主導の JFSM 創設準備委員会メンバー、JFS-A,B 監査員研修のテキスト編集。関⻄大学特任教授として食品安全を教えるかたわら 自ら創設した 一般社団法人 食品品質プロフェッショナルズの代表理事となって現在に至る。

●詳細

1.内容物の化学変化
メイラード反応に代表される化学変化がレトルト過程で生じます。また同様の反応が商品の保存中にも起き、フレッシュなものとは似ても似つかない商品となることもよくあります。

2.化学変化の観点からレトルトに向かないもの
メイラード反応が商品の風味にポジティブな効果をもたらすものはレトルトに向いているといってよいでしょう。反対に消費者がフレッシュな風味になじんでいてそのフレッシュさのほうに商品価値を感じているときはレトルトは単に価値を低下させる工程でしかありません。

3.物理的な影響(変化)
パウチの中に棘のような突起のあるものざらざらとした表面をもつものを入れ込むと(パウチの場合は熱で軟化した)最内層のプラスチックに傷をつけてしまいます。また容器内の液面が高く(ヘッドスペースが極小であって内容物の熱膨張によってシール部分から内容物が漏洩するようなものはシールを破壊してしまいます。

4.物理的な影響(変化)の観点からレトルトに向かないもの
棘やざらざらとした外面を持つ具材はできるだけ避けた方が無難です。ヘッドスペースの圧力クッションとしての役割を認識せずあまりにも中身を詰め込みすぎるのは危険です。

5.微生物学的な変化
レトルト中は熱耐性の低い細菌から順に死滅し、最後は熱耐性の高い芽胞菌まで殺滅していくことになるのですがその芽胞菌を最低でも5D~6D(Log5~6ともいわれます)死滅させることが要件であることはあまり知られていません。そして菌種によっては耐熱性が非常に高く5Dの達成がとても困難なものもあります。古くよりいろんなテクニックが使われているのですがこのテクニック群を熟知しているベテラン職員たちが退役あるいは鬼籍にはいってしまい、若いものばかりが創意に任せて対応しているというおっかない状況も出てきています。このセミナーではどういったテクニックがどういったときに役立つのかについての解説を行います。

6.その後の賞味期限・保管温度で要求される殺菌条件
賞味期限が長いほど熱損傷を受けた芽胞菌が受けた傷を修復し終えて増殖してくる可能性が高まります。そして(65℃以下の温度帯では)保管温度が高ければ高いほど強い耐熱性を持った芽胞菌が後日発現してくる可能性が高まります。つまり賞味期限が長いほど、想定される保管温度が高いほど熱殺菌を強めにしないといけないということです。もしもレトルトパウチを日本(温帯)で製造して東南アジア(亜熱帯~熱帯)に輸出するとしたら日本で販売しているよりもきつめの熱殺菌を必要とするということになります

7.レトルトの選択
PのT人窯、Hのオートクレーブ形式のレトルト窯、Rルーションの熱水浸漬型レトルト窯など名前を聞いてはっと気づかれるような方には大きな注意喚起をいたします。ダメだとは言いませんがよくよくその特性を見極めながら利用することです。これらは私が熱殺菌工学講座の中で常々申し上げている熱分布と熱浸透の両方におおきな弱点を持つ装置群だからです。また特に大容量パウチの場合冷却時の加圧機構が不十分なため、破袋の危険性が高まります。破袋という極端な結末を目にすればその製品は当然廃棄となるでしょうがとても困るのは何とかシール部は持ったが(一見何も問題はないように見えるが)、ダメージを受けており、そこには小さな穴が開いてしまっているという場合です。今からの購入を計画なさっている方は間に合うようでしたらストップし、たとえはるかに高価であっても信頼性の高いメーカーに切り替えてください。

8.結語
レトルトは古くからあるシステムであり、レトルト機器メーカーは過去の苦い経験をどんどん設計に生かし、コンピューターの組み入れによって可能となったフェイルセーフと相まって非常に信頼度が高まっています。
ただレトルトへの新規参入組はこういった背景を熟知することなく簡略化したシステムで価格を下げユーザーが引っ掛かりやすいようなシズルワードを並べ立てて気を引いています。ユーザー側にもなぜレトルト機器がこのように発展してきたのかの知識もなく、Fo=4かけるだけで十分といった危険な発言までが聞かれるような時代となってしまいました。レトルトはひとつ間違えば人を殺すための殺人マシーンと化してしまいます。そんなことの起きないようみんなで知恵を出し合い助けあっていきたいものです。

<受講対象>
レトルト食品の品質管理という立場の方はもちろんとして、レトルト機器の選定に関わる方・それを承認される方、レトルト食品の設計にマーケティングとしてあるいはテクニカルに関わっている方など、要はレトルト食品が市場に送り込まれるまでのどこかのプロセスでその影響力を行使なさっている方々全員に学んでいただきたい内容です。

<講師の言葉>
 レトルト食品では耐熱・耐圧面で強化された包材を採用しないといけないといった包材コスト増や、水を大量に使用する・熱を大量に必要とするための水道光熱費増に加え、試作でもしなければ把握できない風味の変化、試作品を実際に保管でもしなければ期限設定が難しい、虐待試験で期限確認に必要な期間を短縮できるかどうかもレシピ次第と、レトルトをかければすべての課題が解決といった夢のような話には根拠と言えるものがありません。

 課題解決に至らなかっただけであればまだ不幸の度合いは小さいとあきらめることもできましょうが、作ったはいいが食品安全上の懸念を呈している商品群があるという状況は、ここで改めてレトルト食品の開発についての留意点というセミナーを構築していくのに十分な理由があると感じ、このセミナーを企画することになりました。

 最後に質疑応答の時間を設けます。そのなかで個別事例・特殊事例についての相談も承ります。個別事例・特殊事例につきましては参加申し込み時に簡単な説明をいただけますと実施日までに調査しておきますのでその場での的確な回答が可能となります。



  • facebook

  • 食添素材ナビ
       



      
ページTOPへ